「歴史の郷へ応援団三原」は、9月28日、同市和田コミュニティーセンターで、「三原郷歴史探求会」を開いた。元館山市立博物館長の岡田晃司氏が「安房国における三原郷の歴史と環境」をテーマに講演、市内外から50人が参加し耳を傾けた。
この日は岡田氏が、安房国朝夷郡の中で、三原川が形成した谷に奥深く展開する三原郷の地理的立地や生活環境から、縄文遺物包蔵地、やぐらなどの古代から中世の遺跡、真田氏と正木氏にまつわる伝承・史実を基に、三原郷の歴史的特性などをひもといた。
海に面した朝夷地区でも三原川流域の谷を中心に展開する三原郷は、縄文時代から奈良平安時代の遺跡が数多く広がることが知られ、東は江見まで三原郷に含まれると考えられていること。鎌倉時代から三浦一族の真田氏が土着し、室町時代には鎌倉文化のやぐらを三原郷に受け入れ、館山市の九重まで勢力を広げていたこと。戦国時代には朝夷・長狭へ進出した同じ三浦一族正木氏の配下となり、三原郷は正木氏に明け渡されたこと。三原郷には正木氏以前の千葉系境井氏の伝承や、里見氏・正木氏とつながる鈴木氏の伝承があり、長狭郡山の城との関わりがみられることなど、三原川流域の谷の世界を越えた交流の広がりが理解された。
会場にはとうしろ台城跡から出土した縄文時代の土器・石器片、縄文海進を示す地層で確認された約7000年前の海底の堆積物・生痕化石・礫石など露頭の写真や説明文なども展示された。また、「お万の方」ゆかりの脇差の写真や文章も展示され、聴講者の注目を集めた。参加者からは、「地元の鈴木氏の伝承から正木氏のもとでの役割を考察したところが興味深かった」という意見があった。