2月のウォッチングは「民話の里を訪ねて」と題して、八束地区の丹生を歩きました。
今年は例年よりも10日も早く春一番が吹き、この日は朝のうちの雨は心配でしたが、とてもあたたかな陽気となりました。ホオジロの「一筆啓上仕候」も聞こえ、ツバメの先遣隊も青い空を横切ります。
この日は、丹生と深名の昔の村境に祀られている岩先の地蔵群からスタート。ここは江戸時代、木の根街道の通行が盛んだった頃、旅人たちが必ず一休みする場所だったそうです。
丹生の枇杷倉庫手前で旧道に分かれます。旧道に入るとすぐに公会堂があります。この公会堂は昔、東福寺というお寺だったそうで、公会堂の中には、現在でも薬師如来が祀られています。ここには薬師如来のありがたいお話が残っています。
関東大震災の時、東福寺のお堂の中で村の子どもたちが遊んでいました。すると突然、薬師如来が現われ、「早く出なさい!」と子どもたちを皆、お堂の下の道まで転がし出してしまいました。放り出された子ども達がお堂を見上げた時、地面が大きく揺れ、お堂を倒してしまいました。しかし、誰一人ケガをせずにすんだそうです。親たちは、それはもう大喜びでした。丹生の人々は東福寺の薬師如来を深く信仰しているそうです。
そんな話をきいていると、偶然にもこの日は、「二の寅のお籠り(おこもり)」という行事を行う日だそうで、丹生のおばあさんたちが準備をしていました。おばあさんたちから、「これから数珠廻しを行うので、ぜひ上がってほしい」いうお話をいただきました。
この数珠廻しは、みんなで輪になり、百万遍(ひゃくまんべん)と呼ばれる大きな数珠を、何度も繰り返し廻しながらお念仏を唱えるといったものです。数珠には房が二つ着いていて、房が自分の所へと来たらその房を体の悪いところなどに押し付けて、加護をお祈りするのですが、参加者の皆さんは本当に貴重な体験をさせてもらったと、たいへん満足していました。
汗をかくほどの陽気のなか、昔から伝わる話を聞きながら、木の根街道を楽しみました。